「また営業会議か……」
そう思っていた時期が、正直ありました。
食品スーパーの店長として、私は足掛け2年間、営業会議で厳しいことを言われ続けています。
数字が良い時の営業会議は、前向きな意見交換の場になります。
でも、数字が伸び悩んでいる時の会議は、向かうだけで気持ちが重くなることもあります。
「今回は何を聞かれるだろう」
「どんな説明をすればいいだろう」
そんなことを考えながら会議に向かっていた時期もありました。
1年目は、何とか踏ん張りました。
競合店のオープンがあり、その影響を受けながらも、売上を落とさないための施策を打ち続けました。
ところが2年目に入り、状況はさらに厳しくなりました。
自社の新しい店舗との競合。
他社店舗の改装。
さらに他社の競合店の出店。
これから商圏がさらに厳しくなることを予想し、2年目は売上を追うだけでなく、経費を削減する方向にも舵を切りました。
その結果、良かったこともたくさんありました。
一方で、売場の完成度が一気に下がったと感じる時期もあり、それが売上減少に拍車をかけた可能性もあります。
そして現在も、数字は厳しいままです。
1か月頑張ったからといって、翌月に数字が大きく改善するほど、店舗運営は簡単ではありません。
それでも最近、少しずつ感じることがあります。
数字にはまだ大きく表れていないけれど、現場は少しずつ変わってきている。
私自身の動き方も変わりました。
メンバーの動きや意識も変わってきたように感じます。
まだ答えは出ていません。
この記事は、店を立て直した成功談ではありません。
現在進行形で苦戦している、現役スーパー店長の記録です。
営業会議で厳しい質問を受け続けて気づいたこと
営業会議で厳しい質問を受けると、
「自分の能力が足りないからだ」
と落ち込んでしまうことがあります。
もちろん、店長として改善しなければならないことはあります。
ただ、2年間経験してみて、営業会議で問われているのは、単純に「数字が良いか悪いか」だけではないと感じるようになりました。
問われているのは、
- なぜこの数字になったのか
- 数字の根拠を理解しているか
- 何が原因なのか
- その原因に対して何をしたのか
- それは良かったのか、悪かったのか
- 次に何をするのか
ということです。
以前の私は、売上が悪い理由を説明することが多かったと思います。
「競合店がオープンしたから」
「天候が悪かったから」
「人手が足りないから」
どれも事実です。
でも、それだけでは店長として十分ではありません。
「その状況の中で、店長として何を考え、何をしたのか」
そこまで説明する必要がある。
これは、営業会議を通して学んだ大きなことでした。
1年目は、とにかく売上を追った
最初の1年間は、売上を落とさないことに力を注ぎました。
競合店がオープンすれば、お客様の流れが変わる。
当然、自店にも影響が出ます。
だから、売場をどう変えるか。
どうすればお客様に来てもらえるか。
どうすれば買っていただけるか。
売上を維持するために、さまざまな施策を打ちました。
売場を見直す。
商品を見直す。
欠品を減らす。
競合店を見る。
スタッフと話す。
自分自身も売場に入る。
目の前にある問題を、一つずつ潰していく。
そんな1年間でした。
結果として、何とか踏ん張ることはできました。
今振り返れば、この1年目は「売上を作る」ということを改めて考えた1年だったと思います。
2年目は、経費削減に舵を切った
ところが、2年目になると状況が変わってきました。
自社の新しい店舗との競合。
他社店舗の改装。
さらに他社の競合店出店。
これからますます競争が厳しくなることが予想されました。
そこで私は、
「この先、売上が厳しくなるのであれば、経費もしっかりコントロールしなければならない」
と考えました。
そして2年目は、売上を上げる施策だけではなく、経費削減にも力を入れるようになりました。
これは、その時点では必要な判断だと思っていました。
しかし、実際にやってみると、簡単な話ではありませんでした。
経費を削ったことで、売場の品質が落ちた
人員や作業時間を抑えれば、当然、売場にかけられる時間も減ります。
商品の前出し。
売場のメンテナンス。
欠品確認。
売場づくり。
お客様への対応。
一つひとつの仕事に使える時間が少なくなります。
その結果、私はある時期から、
「売場の完成度が一気に下がった」
と感じるようになりました。
そして、
「これが売上減少に拍車をかけた可能性もあるのではないか」
と考えるようになりました。
もちろん、すべてを経費削減のせいだとは考えていません。
競合店の出店や改装、周辺環境の変化など、外部要因も大きくあります。
ただ、
「売上が悪いから経費を削る」
というだけでは、うまくいかない場合がある。
これは、この2年間で身をもって感じたことです。
でも、経費削減で良くなったこともたくさんある
一方で、経費削減に取り組んだからこそ、良くなったこともあります。
例えば、これまで人の力に頼っていた作業に機材を導入し、効率化できるようになったこと。
スタッフのマルチジョブ化が進んだこと。
一つの仕事だけではなく、複数の仕事を担える人が増えたこと。
そして、セクション間での人的交流が進んだことです。
以前なら、
「これは青果の仕事」
「これはグロサリーの仕事」
というように、それぞれのセクションで仕事が分かれていました。
それが少しずつ、
「今日はこっちを手伝います」
「この仕事ならできます」
というような、セクションを越えた助け合いにつながってきました。
これは、当初からそこまで狙っていたわけではありません。
経費を抑えるために始めたことが、結果としてスタッフの仕事の幅を広げたり、セクション同士の交流を生んだりしました。
これは、私にとって予想以上の成果でした。
経費削減は、良かったのか悪かったのか
この2年間を振り返ると、経費削減を単純に、
「失敗だった」
とも、
「成功だった」
とも言えません。
機材導入による効率化。
スタッフのマルチジョブ化。
セクション間の交流。
こうしたものは、今後の店舗運営にとって大きな財産になると思います。
一方で、売場に必要な人や時間まで削ってしまえば、売場の完成度が落ち、結果として売上に影響する可能性もあります。
だから大切なのは、
「何を削るのか」ではなく、「何を削って、何を残すのか」
なのだと思います。
経費削減そのものが悪いわけではありません。
必要なところに人や機材を集中させるための経費削減なら、店を強くすることもできます。
逆に、売場の力を維持するために必要な部分まで削れば、店を弱くしてしまう可能性があります。
今も、このバランスについて考え続けています。
尊敬する二人の先輩店長から教えてもらったこと
営業会議で思うように説明できず悩んでいた頃、私は尊敬する二人の先輩店長に相談しました。
自店の状況や取り組みを説明すると、返ってきたのは精神論ではありませんでした。
「結果の数字だけの発表は必要ない」
「何をやったのか」
「それが良かったのか、悪かったのか」
「そして、課題は何なのか」
「次に何をするのか」
「その策はあるのか」
「その結果、どのくらいになるのか。目標を数値で示しなさい」
この言葉は、今でも忘れられません。
同時に、視界が一気に開けた瞬間でもありました。
教えていただいたのは、
自店の強みと弱みを整理すること。
最初に取り組む課題を明確にすること。
時間帯別、年代別の売れ方を分析すること。
前年の売れ筋商品の欠品を防ぐこと。
生鮮部門では、1時間あたりの製造数から人員配置を考えること。
そして、
数字を根拠に店を動かすこと。
さらに、仕事の基本も教えていただきました。
パソコンでのデータ整理。
資料の作り方。
机の整理整頓。
「仕事は準備で決まる」
という姿勢そのものです。
今でも、その教えを実践しながら、日々アップデートしています。
でも、数字は1か月では簡単に変わらない
いくら考えて施策を打っても、1か月で数字が大きく変わるとは限りません。
むしろ、何かを変えようとした時ほど、
「やったのに数字が変わらない」
ということがあります。
前回の営業会議でも、厳しい話がありました。
そして次の営業会議でも、おそらく良い話ばかりにはならないでしょう。
数字が落ちている以上、それは当然です。
店長として結果から逃げるつもりはありません。
でも、現場にいると、数字だけでは分からない変化もあります。
それに最近、少しずつ気づくようになりました。
数字にはまだ出ていない。でも、現場は変わってきた
今、私自身の動き方が変わってきています。
以前よりも、数字だけを見るのではなく、現場を見るようになりました。
売場を見る。
スタッフと話す。
商品の動きを見る。
お客様の様子を見る。
そして、
「なぜこうなっているのか」
を一緒に考える。
単に、
「これをやってください」
と指示するのではなく、
「なぜ、この売場にするのか」
「なぜ、この商品を売りたいのか」
という理由まで伝えるようになりました。
すると、メンバーの動きや意識にも少しずつ変化が出てきたように感じます。
自分から売場を考える人。
商品の見せ方を工夫する人。
数字を意識して話す人。
以前より、自分で考えて動いてくれる場面が増えてきました。
もちろん、すべてがうまくいっているわけではありません。
数字も、劇的に改善したわけではありません。
それでも、
「前とは少し違うな」
と思う瞬間があります。
店長一人で頑張るだけでは、店は変わらない
以前の私は、
「店長の自分が頑張れば、数字は戻る」
と思っていました。
売場を見る。
発注を見直す。
自分でも売場に入る。
もちろん、それも必要です。
でも、店が本当に変わるには、自分一人で抱え込まないことも必要でした。
スタッフに、
「なぜこの売場にするのか」
「なぜこの商品を勧めるのか」
という理由まで伝える。
そして任せてみる。
ある商品の陳列を変えた理由を説明したら、その後、担当者が自分なりに工夫を加えて売場を作るようになりました。
発注のコツを伝えたところ、数日後には売場いっぱいに商品が並んだ最高の状態になっていて、
「店長、できましたよ!」
と声をかけてくれたこともあります。
売場のレイアウト図を渡しただけなのに、それを参考にしながら、自分でテーマを考えて売場を作ってくれる担当者もいます。
売り込みたい商品があると、店内アナウンスで必死に呼びかけてくれる人もいます。
こちらが理由を伝えただけで、それぞれのやり方で応えてくれる。
任せてみると、任せた分だけ返ってくるものがある。
そんなことを何度も実感してきました。
だから今は、
「自分一人で頑張るより、みんなで店を動かしたほうが強い」
と感じています。
営業会議で評価されるものは何なのか
営業会議に出ていると、もう一つ考えることがあります。
同じように数字が厳しい店でも、定期的に上司へ報告している店長。
きちんと資料を作っている店長。
取り組みを分かりやすく説明している店長。
そうした店長のほうが、評価されているように感じることがあります。
もちろん、報告も資料作成も大切な仕事です。
自分の考えを整理するためにも必要です。
上司と店舗の状況を共有するためにも必要です。
私自身も、その重要性は分かるようになりました。
ただ、ふと考えることがあります。
「同じ数字でも、報告の仕方が違えば評価が変わる。それで本当に良いのだろうか」
と。
もちろん、数字を正しく説明する力は店長に必要です。
でも、
「資料がきれい」
「説明が上手い」
ことと、
「店が良くなっている」
ことは、同じではありません。
数字を良くすること。
数字を正しく説明すること。
現場を良くすること。
本当は、この3つをつなげていくことが店長の仕事なのではないか。
最近は、そんなことを考えています。
「数字が悪い=何も変わっていない」ではない
もちろん、数字は大切です。
売上が上がらなければ、店の経営は成り立ちません。
だから、
「現場が頑張っているから数字が悪くてもいい」
とは思っていません。
ただ、
「数字がまだ変わっていない=何も変わっていない」
とも思わなくなりました。
人の意識が変わる。
行動が変わる。
売場が変わる。
スタッフ同士の関係が変わる。
そうした変化が積み重なって、ようやく数字につながることもある。
人が変わるには時間がかかります。
売場が変わるにも時間がかかります。
だから今は、数字だけではなく、その手前にある変化も見るようにしています。
まだ、成功したとは言えない
ここまで書いてきましたが、私は店を立て直したわけではありません。
むしろ、2年目から数字は落ち続けています。
競合店との競争も厳しい。
周辺環境も簡単には変わらない。
次の営業会議でも、厳しいことを言われるかもしれません。
だから、これは成功談ではありません。
今も試行錯誤の途中です。
今のやり方が正解なのかも分かりません。
現場の変化が、本当に数字につながるのかも分かりません。
それでも、以前とは少し違います。
「数字が悪い」
で終わらせるのではなく、
「なぜ悪いのか」
「何が変わったのか」
「まだ何が足りないのか」
「次に何をするのか」
を考える。
そして、また現場に戻る。
その繰り返しです。
それでも、また営業会議に向かう
「また営業会議か……」
今でも、そう思うことはあります(笑)。
数字が良くなければ、気持ちが重くなるのは変わりません。
でも、2年前の自分とは少し違います。
以前は、
「何を言われるんだろう」
と不安になることが多かった。
今は、
「数字はこうなっています」
「原因はこう考えています」
「ここまで取り組みました」
「まだ数字には出ていませんが、現場ではこういう変化があります」
「次はこれをやります」
と、自分の言葉で話したいと思っています。
完璧な答えを持って会議に行く必要はないのかもしれません。
大切なのは、
数字から逃げないこと。
そして、
現場からも逃げないこと。
その両方なのだと思います。
まとめ|まだ結果は出ていない。それでも、現場は変わり始めている
足掛け2年間、営業会議で厳しいことを言われ続けてきました。
1年目は売上を上げるための施策を打ち、何とか踏ん張りました。
2年目は、さらに厳しくなる競争環境を見据えて、経費削減にも取り組みました。
その結果、売場の完成度が下がり、売上減少に拍車をかけた可能性もあります。
一方で、機材導入による効率化、スタッフのマルチジョブ化、セクション間の人的交流など、良い変化も生まれました。
そして今は、改めて現場を見ることを大切にしています。
自分の動き方を変える。
メンバーに理由を伝える。
任せる。
一緒に考える。
少しずつですが、メンバーの動きや意識も変わってきたように感じます。
まだ数字には大きく出ていません。
だから、成功したとは言えません。
でも、何か良い方向に向かいつつある。
そんな手応えを感じる部分があります。
店長という仕事は、数字だけを見る仕事でもありません。
現場だけを見る仕事でもありません。
数字を見て、現場を見て、人を見て、考えて、行動する。
そして、また数字を見る。
その繰り返しなのだと思います。
私は今も、鍛えられ続けています。
次の営業会議でも、良い話ばかりはできないでしょう。
それでも、また現場に戻ります。
数字から逃げない。
でも、数字だけで現場を判断しない。
今の私にできるのは、その両方を大切にしながら、少しずつ店を前に進めていくことなのだと思っています。
食品スーパーで30年以上働いてきた私の経験から、食費の節約について書いた記事もあります。、食費節約術の記事もよければご覧ください。



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